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サルも呆れた住専問題

住宅金融専門会社 そのQ&Aを一挙掲載!


そもそも住専とは?
 近頃、世間は「住専」問題で騒々しい。テレビをつけても新聞を見ても、「住専」の二文字が躍っていない日は、ない。
 1月末から始まった通常国会は「住専国会」といわれ、与野党が住専をめぐり、丁々発止やりあっている。硬派の週刊誌はもちろんだが、芸能ネタや皇室ネタで食っている女性週刊誌までもが「住専特集」を組むほどである。つまり住専はいまや、経済問題にとどまらず社会問題化しているのである。
 民間会社の損失の穴埋めにわれわれの税金を使うなど、「住専」をめぐる問題は非常に腹立たしい。腹立たしいが、ふと、「住専とは何か」「問題の本質は?」と尋ねられると、どうも返事に窮してしまうのも事実。そこで、今月号のお好み書きでは、住専問題を理解していただこうと、「住専Q&A」を企画した。とかく難しい経済ネタだが、現在最も騒がれている話題だけに、その理解の一助になれば幸いである。


 Q1:そもそも住専って? 

 住専、すなわち住宅金融専門会社は、個人向けの住宅ローンを販売(※註1)するために設立されました。住専は銀行からお金を借り、それに数パーセントの利子を上乗せして一般客に貸し出す、いわばノンバンクです。第1号は日本住宅金融で、設立は71年6月。その後、79年までの8年間に8社が設立されています。

[註1]金融会社にとっての商品とはお金。お金を貸して利鞘を稼ぐのが商売ですから、貸金が一般会社でいう「販売」に相当します。
 Q2:なぜ、個人向けの住宅ローン会社を
    設立する必要があったのか? 

 住宅ローンや自動車、教育ローン、また使途自由のフリーローンなど、いまでこそ銀行は一般の人にもお金を貸してくれますが(もっとも審査が必要ですが)、その昔、銀行は個人からは預金を集めるだけで、担保抜きで個人相手にお金を貸し出すことはほとんどありませんでした。銀行の貸出先は企業に限られ、一般人にとって銀行は大変敷居の高い存在だったのです。
 高度成長がピークとなる70年代。万国博覧会で象徴的なように、一般の人たちの生活も裕福さを増し、高嶺の花だった家電製品やマイカーなども比較的買い求めやすくなりました。そして次に欲しくなるのがマイホーム。もっとも、現金一括払いで買える人は少数であり、ほとんどの人がローンで購入しなければなりませんでした。しかし先述したとおり、条件や審査が非常に厳しい銀行は個人をほとんど相手にしなかったため、マイホーム願望の需要を反映して大蔵省などの肝いりにより住専が設立されたのでした。8年間で8社も設立されたように、当時は住専各社も順調に業績を伸ばし、需要に十分に応える存在でした。ちなみに、評論家の田原総一郎氏も「当時、私も住専から借金してマイホームを建てました」と某番組で“告白”していましたが、これは余談です。

 Q3:新聞やテレビでよく聞く母体行って何? 

 住専を設立した銀行のことです。Q2でも述べましたが、銀行は、リスクが大きいとされた(※註2)個人に金を貸すことはせず、各銀行が寄り合って代わりの別会社(つまり住専)を作りました。こうすれば住専という安定した貸し出し先が増える一方、万が一リスクがあっても、銀行の負担は軽くなると考えたからです。住専八社の母体行のリストは次のとおりです。

[註2]銀行がいうリスクとは貸した金が戻ってこないことをいいます。当時、銀行から見て一般企業に比べて個人の信用力は低く、リスクの高い存在と思われていました。
●日本住宅金融(株)
【設立】71年6月23日
【大株主/()内は持株比率】 さくら銀行(4.99%)、三和銀行(4.99%)
三井信託銀行(3.13%)、東洋信託銀行(3.10%)
北海道拓殖銀行(3.08%)、あさひ銀行(3.08%)
大和銀行(3.08%)、横浜銀行(2.62%)
千葉銀行(2.62%)、日本生命(1.47%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:1兆9636億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役会長 岡島和男(大蔵省OB)
○代表取締役社長 丹羽 進(三和銀行OB)

●(株)住宅ローンサービス
【設立】71年9月1日
【大株主/()内は持株比率】 第一勧業銀行(5.00%)、富士銀行(5.00%)
三菱銀行(5.00%)あさひ銀行(5.00%)
住友銀行(5.00%)、さくら銀行(5.00%)
東海銀行(5.00%)、日本長期信用銀行(2.06%)
日本債券信用銀行(2.06%)、日本興業銀行(2.06%)
中央信託銀行(2.06%)、三菱信託銀行(2.06%)
日本信託銀行(2.06%)、住友信託銀行(2.06%)
安田信託銀行(2.06%)、朝日生命ほか(17.79%)
足利銀行ほか(14.71%)、東京海上火災ほか(12.35%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:1兆4285億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 井上時男(第一勧銀OB)
○代表取締役常務 湊 靖隆(富士銀行OB)

●(株)住総
【設立】71年10月1日
【大株主/()内は持株比率】 信託銀行七行(5.0%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:1兆6254億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 山本 弘(三菱信託銀行OB)
○代表取締役専務 町田俊郎(住友信託銀行OB)

●総合住金(株)
【設立】72年7月18日
【大株主/()内は持株比率】 東京相和銀行(2.44%)、愛知銀行(2.44%)
名古屋銀行(2.44%)、近畿銀行(2.44%)
福徳銀行(2.44%)、兵庫銀行(現みどり銀行)(2.44%)
福岡シティ銀行(2.44%)、西日本銀行(2.27%)
日本長期信用銀行(2.18%)、日本興業銀行(2.18%)
日本債券信用銀行(2.18%)、北洋銀行(2.14%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:1兆1283億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 大槻章雄(大蔵省OB)
○専務取締役   宮石哲郎(さくら銀行OB)

●日本ハウジングローン(株)
【設立】76年6月23日
【大株主/()内は持株比率】 日本興業銀行(5.00%)、日本債券信用銀行(5.00%)
大和證券(5.00%)、日興證券(5.00%)
山一證券(5.00%)、安田火災(0.94%)
東京海上火災(0.68%)、新日本証券(0.65%)
住友信託銀行(0.47%)、三菱信託銀行(0.47%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:2兆2543億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長  会田稜三(日本興業銀行OB)
○代表取締役副社長 檀野統一(日本債券信用銀行OB)

●第一住宅金融(株)
【設立】76年6月23日
【大株主/()内は持株比率】 野村土地建物(27.80%)、日本ランディック(27.59%)
野村證券(5.00%)、日本長期信用銀行(5.00%)
第一證券(1.03%)国際証券(1.02%)
東洋信託銀行(0.83%)、住友信託銀行(0.82%)
三井信託銀行(0.82%)、持株会(0.68%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:1兆5148億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 山仲靖郎(日本長期信用銀行OB)
○代表専務取締役 山縣淑富(野村證券OB)

●地銀生保住宅ローン(株)
【設立】76年6月1日
【大株主/()内は持株比率】 日本生命(7.41%)、第一生命(5.03%)、住友生命(3.90%)
横浜銀行(2.70%)、朝日生命(2.68%)、明治生命(2.68%)
静岡銀行(2.06%)、北陸銀行(1.83%)、常陽銀行(1.78%)
太陽生命(1.75%)、三井生命(1.75%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:8839億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 坂齊春彦(千葉銀行OB)
○代表専務取締役 中村廣美(横浜銀行OB)

●協同住宅ローン(株)
【設立】79年8月10日
【大株主/()内は持株比率】 47信農連(50.8%)、農林中金(49.0%)
全国信連協会(0.2%)
【95年3月末現在の業績】融資残高:7044億円
【おもな役員と出身】 ○代表取締役社長 赤羽昭二(農林中金OB)
○専務取締役   菅田喜興志(農林中金OB)


 Q4:住専が経営破綻した原因とは? 

 まさに、それこそが問題の本質です。当初、個人向け住宅ローンの需要も旺盛なことから住専各社の業績は順調でした。貸出金もちゃんと回収できていました。そこに色気を出したのが母体行ともいうべき銀行だったのです。銀行の得意先である企業(特に大企業)は、好景気から次第に業績がアップ、銀行からの借入金を徐々に減らしていきました。政府の金融緩和策は金利を低く誘導、かわって株式市場が沸いてきたのでした。これにより企業は銀行に高い金利を支払わずとも、株式市場などから低コストのお金が調達可能となりました。逆にお金の貸出先を失った銀行が目をつけたのが、個人向け住宅ローンを柱とする個人貸付だったのです。実績とリスクの安全さは住専がすでに証明済み。銀行は自ら設立した住専のマーケットを奪い、逆に客を奪われた格好の住専は不動産融資など、事業用融資にのめり込んでいったのでした。
 90年3月。不動産融資総量規制(※註3)の枠から外れた住専はますます不動産への融資を加速しました。だが、バブル崩壊とともに不動産業界も崩壊。そこに貸し込んだ住専の不良債権額は、なんと6兆円以上ともいわれています。

[註3]バブル期における土地の異常高騰を憂慮した大蔵省は銀行の不動産向け融資を規制した。これにより、銀行から借金して土地を買い漁り、土地転がしを行っていた不動産業界は資金パイプを止められ青息吐息の窒息状態に陥った。土地の値段は下がりはじめたが、倒産する不動産屋が続出。銀行も多額の不良債権を抱える結果となった。しかし問題なのは、なぜか住専だけは不動産融資規制のラチ外だったことだ。結局、銀行や農協系金融機関は住専を迂回して不動産業向けに融資を続け、銀行からの資金パイプを止められた不動産業界は住専からの資金流入に食らいついた。ちなみに当時の大蔵大臣は、現総理大臣の橋本龍太郎。
 Q5:公的資金とはなんですか? 

 住専の破綻処理に公的資金を導入するといわれています。この公的資金には大きく分けて4つのものがあります。ひとつは預金保険機構の資金。銀行や信用金庫・信用組合が経営破綻してペイオフ(※註4)が実施された場合、預金者ひとりにつき最高1千万円までの元金が保証されますが、預金保険とはそのための資金です。この原資は各行が負担しますが、もともとは私たちの預金の利子の一部が使われています。二番目は日銀法第25条による特別融資。金融システムの維持を名目に、大蔵大臣の認可を得て日銀が実施します。最近では兵庫銀行やコスモ信組、木津信組が破綻した際、預金の流出の穴埋めに使われました。三番目は財政投融資。郵便貯金や厚生年金など、国の信用を背景に私たちから集めたお金を、高速道路や空港などの国家的プロジェクトに使います。
 そして四番目が、国や地方公共団体による一般会計予算からの財政資金です。原資は所得税や法人税、住民税など私たちの税金です。その利用には国会や地方議会の審議が必要ですが、政府・大蔵省は住専の処理に、この資金のうち6850億円(国民一人につき5500円)を使おうとしています。
[註4]銀行が倒産した場合、預金者には最高1千万円までの元金しか保証されないことをいう。いまだ実施されたことはないが、昨年秋、大蔵省は「3年以内にペイオフの可能性」があると公式に発言している。
 Q6:住専破綻、誰に責任があるの? 

 住専破綻の責任論には大きく分けて母体行責任、貸手責任、借手責任の3つがあります。母体行責任の根拠はQ4のとおりですが、貸手責任、借手責任とはいったいなんでしょうか。むろん母体行も住専に多くのお金を貸しているのですが、それは設立背景からみて当然として、農協系金融機関(いわゆる農林中金や信用農協連合会、略して信連など)も多額の融資を行っています。住専8社の借入金合計は約13兆7千億円。うち、農協系金融機関からの借入れは5兆5千億円にも上ります。80年10月、当時の鈴木内閣は、それまで原則的として組合員にしか貸し出せなかった農協系金融機関の資金を、住専にも貸し出せるように規制を取り払いました。
 集めたお金を運用するノウハウも乏しく、貸出にも困っていた農協系金融機関にとって住専は魅力的な資金運用先だったようです。「お金を貸すにもリスクを背負う覚悟が必要。だから農協系金融機関も応分の責任を負担してもらう」というのが貸手責任の根拠ですが、昨年末に大蔵省が発表した住専再建策では、この農協系金融機関の負担額はわずか5千3百億円、しかも残りを公的資金で穴埋めするというのですから、「農協を救うための処理策だ」と世論から反発があるのも無理のないことです。また、「借りたものは返す」という当たり前の原則に照らし合わせてみれば、住専から多額の借金を背負っている借手側の不動産・建築業の責任はいうまでもないことです。
 そこで、最終的に誰に責任があるのかという問題ですが、一番責任が重いのは大蔵省だろうと私は思います。OBを送り込むなど、住専の設立から深く関わり、破綻の実態を知り得る立場にありながら問題を先送りしてきた大蔵省の罪が軽くあっていいはずがありません。公的資金の導入をいうなら、その前に大蔵官僚の責任を問うべきでしょう。


 Q7:マスコミが暴露する「大口融資リスト」は
    誰が作ったのか? 

 最近、世論の追い風もあり、借手側の責任を追求する声が強いのは事実です。当初、政府もプライバシーを盾に匿名で借手のリストを公表しましたが、相前後して全国紙やテレビなどが実名でリストの公開に踏みきったことや、野党側の強い追求もあり、実名公表に踏み切るようです。入手経路はいえませんが私もリストを持っています(=写真:インターネット版では割愛)。どうも、どのマスコミも同じものを所持しているようですが、一説によれば、大蔵省と農協系金融機関が作成したといわれています。


 Q8:借手の責任はどう追求するのか? 

 先月中旬、某週刊誌が大口融資先であるS興産の社長のプライバシーを暴く記事を掲載していました。私は、この記事は警視庁とリンクしたものだと推測しています。公的資金の導入には野党や世論の反発が相当強いので、その批判をかわすために政府としては一応のケジメをつけた後で公的資金を投入する、というプランではないかと想像します。そこで、取り組みやすいのが借手側の責任追及です。事実、検察と警察は住専問題を専門に扱うプロジェクトチームを発足、借手の刑事責任を追求する構えです。S興産は大阪ミナミに本拠を構える山口組系の古参幹部と親密につき合っていると噂されていることから、警察にとって格好のターゲットに違いありません。マスコミを使って「借手憎し」の世論を形成し、「御用!」とするのでしょうか。しかし、借手側が悪いのも事実です。S興産なども住専からグループで約2千億円以上もの借入金がありながら返済せず、社長はいまも北新地で豪遊しているといわれています。でも不思議なのは、S興産などは賃貸ビル・マンションなどの家賃収入が年間百億円以上もありながら、どの金融機関も差し押さえていないことです。住専をはじめ複数の金融機関がS興産に融資していますが、本気で回収する気があるのか、疑わしい限りです。また、この貸金回収に関して面白い話を聞いたことがあります。某住専の回収担当者が貸付先である某企業の社長に直談判に行ったおり、その社長は「今日はオブザーバーとして私の知人に来てもらいました」と、一目で“その筋”の方とわかる人間数人を横に座らせていたそうです。その担当者が回収に成功したかどうかまでは知りませんが、暴力団の影が資金回収の足かせになっていることは、たぶん事実だと思われます。


 Q9:住専処理に公的資金を導入しなかったら、
    政府のいうとおり金融パニックが起こるのか? 

 政府・大蔵省は「金融パニックが襲ってからでは遅い。今、至急にやるべきことは公的資金の導入である。責任追及はその後で」というニュアンスの発言を繰り返していますが、住専の処理に公的資金を使わず、母体行と貸手、借手側にすべて委ねてしまうと、果たしてどうなるのでしょうか。ある金融機関の幹部は「住専に貸し込んでいる金融機関のなかには体力のない地方銀行もあり、住専を破産させると不良債権が増え、たちまち経営破綻するところも少なくない」と訴えます。確かに住専の処理の仕方によっては潰れる銀行が出て、昨年のコスモや木津信組のような取りつけ騒ぎが再来しないとも限りませんが、それなら膿は一機に出すべきだと考えます。どうせ潰れる金融機関なら、早く潰した方がよいのです。体力があり健全な金融機関だけのほうが、私たちにとってもよいことです。言葉は悪いですが、“味噌も糞も”では預金を預ける側も心配です。 結論。住専の処理に公的資金を導入しなかった場合、一部金融機関の経営が成り立たなくなる可能性は大だが、長い目でみたら、預金者にとっても経済全体にとっても、その方がよいと思います。


 Q10:結局、住専問題の結末はどうなるのか? 

 東京のある政治記者と話したおり、「小沢率いる新進党も、住専追求で与党を揺さぶる構えだが、結局は中途半端に終わる公算が大きい」と語っていました。それは、1.ここにきて政治家の住専への関与がクローズアップされてきたが、当の新進党内部にも関与議員がおり、深く追求すると藪蛇になる 2.与党は池田創価学会名誉会長の証人喚問に力を入れているが、なんとしても阻止したい新進党は住専で与党を揺さぶる一方、裏では池田喚問と引き替えに住専追求を引き上げる、がおもな理由だといいます。
 今から数年前、米国でも金融機関の破綻があいつぎましたが当局は銀行を破綻させたという理由だけで、当時2〜3千人もの経営者らを逮捕、平均2年の実刑を与えています。隣の韓国でも、前・元大統領を内乱や収賄の罪で獄につないでいます。
 ひるがえって日本はどうでしょうか。たぶん住専の処理に絡んでは、借手や貸手などを含め数人の逮捕者は出るかもしれませんが、大蔵官僚や政治家を捕まえることは、たぶんないでしょう。悲しいかな、それが日本政治の現実です。でも、その現実を支えているのは私たちの低い政治意識であることも忘れてはいけません。



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